ポルトガルの常春の島、マデイラ島へ

#ヨーロッパ #暮らし #安田和代

2026/11/044 Views

writer:安田 和代(やすだ かずよ)
ロンドン在住の日本人編集者/ライター。昼は本を編み、夜は毛糸を編み、週末は畑で有機野菜を育てる日々。読書、写真、畑しごと、発酵食品&保存食づくり、編みもの、ポッドキャスト「試運転(仮)」、通信制大学で食物学の勉強など、あっちもこっちも。

ポルトガル領でありながら、ヨーロッパ大陸よりもアフリカ大陸に近いマデイラ島。
日本ではあまり知られていない、この緑と海に恵まれた常春の島をご紹介します。

見どころとアクティビティに溢れたマデイラ

10月の前半、休暇をとってマデイラに行ってきました。

ヨーロッパよりもアフリカ大陸に近い大西洋上に位置するこの島は、年間平均気温は16〜25度と冬も温かく夏も暑くなりすぎない、まさに常春の島。
英国をはじめ、北ヨーロッパの富裕層は、古くから避寒や病気療養のためにこの地を訪れていました。
東京都23区よりやや大きい程度の小さな島ですが、火山活動によって形成されたその地形は起伏に富み、ドライブをすれば5分ごとに風景が変わるといっても過言ではないほど、山々や深い渓谷、海に落ち込む崖などのドラマチックな景観に恵まれています。

そのため、島の北部の山々は雨が多く、南側は乾燥しているという局地気候。
15世紀の入植当初から人々は南側の日当たりのいい山間に、段々畑をつくり、全長約3000キロとも言われる灌漑用水路を敷いて農作物を育ててきました。
水路に並走する作業の小道は、トレッキング用のルートとして整備されており、シダやローリエなどが生い茂る古代の照葉樹林や火山岩の尾根を渡る絶景を楽しむ事ができます。
「ラウリシルヴァ」と呼ばれるこれらの照葉樹林は、ユネスコの世界遺産にも指定されています。


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危機的な状況に置かれているマデイラワイン

マデイラ島の場所を知らなくても、マデイラワインなら聞いたことがあるという方が多いかもしれません。

マデイラワインは、ポルトワインとシェリーにならぶ世界三大酒精強化ワインのひとつ。
酒精強化ワインとは、ワインの発酵途中でブランデーなどアルコール度数の高いブドウ由来の蒸留酒を加えて発酵を止め、アルコール度数を18〜20%にすることで保存性を高めたワインのことです。
ほかの酒精強化ワインと比べても、マデイラワインは熟成の際に、地下の涼しいセラーではなく、あえて太陽の熱と湿度の高さを利用した屋根裏部屋に樽を置く「カンテイロ」という手法を用いるのが特徴。
この熱熟成によって、火山性土壌由来の強い酸味と重厚な甘みのバランスが生まれます。酸が強いために、栓を開けてから1年以上たっても品質が変わらないのも特徴です。

しかし昨今、マデイラワインの生産現場は深刻な危機に直面しています。
島の若者たちは、段々畑での重労働を伴うブドウ栽培よりも、比較的楽に収入を得られる観光・サービス業に就く傾向があり、また急速な不動産開発による農地の売却・転用により、ブドウの栽培面積も著しく減少しているとのこと。
生産者の減少は、当然のことながら生産量の落ち込みにつながり、その希少価値は年々高まっています。

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坂道をソリで滑り降りるトボガンとは

マデイラ島の首都フンシャルのモンテ地区はは、歴史的に富裕層の邸宅や別荘が多く建ち並ぶエリア。
この標高約600メートルの高台から、急勾配の坂道を滑り降りる籐と木でつくられたソリが「トボガン」です。

19世紀なかば、丘の上に済む富裕層にとって、トボガンはフンシャルの市街地に行くための実用的な交通手段でした。
現在でも、観光客向けの名物アトラクションとして、トボガンは健在です。

「カレイロス」と呼ばれる、白いリネンの制服と伝統的な麦わら帽子を身にまとった2人組の男性に押し出されて、すべり降りる約2キロの旅は実にスリリング。最高時速が50キロ近くに達することもあり、高台からの眺望とジェットコースターのようなスピード感を楽しむことができます。
マデイラを訪れたら、この「世界で最もユニークな交通手段」にぜひ挑戦してみてください。

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本当は秘密にしたいポルトサント島

マデイラ島の北東約40キロ、プロペラ機でわずか20分の位置にあるポルトサント島も訪れました。
この島は、大航海時代の探検家たちによって、マデイラ本島に先駆けて発見された、縦に11キロ、横に5キロという小さな楽園。
緑豊かな山々が連なる本島とは異なり、乾燥した荒野と砂丘が広がる人口約5000人の静かな島です。
マデイラの人々にとって、日常の喧騒を忘れられる癒やしの場所なのです。

探検家クリストファー・コロンブスは、ポルトサントの初代総督の娘と結婚し、この地で大西洋の風や海流、星の動きなど、航海に必要なさまざまな知識を身につけたそうです。
彼が暮らした家は、現在では博物館として、大航海時代のロマンを今に伝えています。

ポルトサント最大の特徴は、なんといっても島の南海岸沿いに約9キロに渡ってのびる白砂のビーチでしょう。
この砂は珊瑚やサンゴ藻などの微細な化石からなる炭酸塩砂で、天然の抗炎症作用は砂療法に使われています。
この成分を持つ砂は、世界中にポルトサントと日本にしかないといわれているそうなので、おそらく砂風呂で有名な指宿と同じ効能があるのかもしれません。

マデイラ本島に住む人々が、ポルトサントについて語るとき、外の人にも知ってもらいたい、でも知られたくない、といった不思議な感情が見え隠れします。
確かに、人の少ないビーチでのんびりと散歩するときに、これは人に教えたくない、手つかずのままでいてほしい、という気持ちになってしまいます。
マデイラを訪れる機会があったら、ぜひポルトサント島にも足を延ばしてみてください。

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