初夏の秘めやかな口福

#ガーデニング #ヨーロッパ #暮らし #安田和代

2025/06/2544 Views

writer:安田 和代(やすだ かずよ)
ロンドン在住の日本人編集者/ライター。昼は本を編み、夜は毛糸を編み、週末は畑で有機野菜を育てる日々。読書、写真、畑しごと、発酵食品&保存食づくり、編みもの、ポッドキャスト「試運転(仮)」、通信制大学で食物学の勉強など、あっちもこっちも。

野菜づくりをしている人なら、誰でも「市販品では味わえない喜び」を知っています。
今回はそんな贅沢な季節の美味についてご紹介します。

イタリア人が絶賛するズッキーニの花

今からちょうど30年前、私がロンドンにやってきて一番最初に仲良くなったイタリア人の女性が、一番好きな食べ物は「ズッキーニの花」と話していました。
当時の私は、ズッキーニの花どころか、ズッキーニそのものもあまり食べつけておらず、ズッキーニの花ってどんな味がするんだろう……と想像するばかりでした。

そんなこともあって、12年前に畑を始めたときに、最初に植えたもののひとつがズッキーニです。
ズッキーニは一株あれば、4人家族が食べるのに十分な収量を得られるといわれるほど、次から次へと実をつける野菜。
最初の年は、実を消費することに必死で、花を食べる心の余裕がないほどでした。

数年経って、ようやくズッキーニの栽培にも慣れてきて、そういえば、花を食べてみようと思い立ちました。
ズッキーニには、雄花と雌花があり、雄花は茎から花が咲きますが、雌花は実のお尻の部分に花をつけています。
蜂や風の力で、雌花が受粉されると実が大きくなっていくという仕組みです。

贅沢に見えるのは、雌花が小さいうちに花も実も一緒に食す、いわゆる「花ズッキーニ」ですが、雄花を茎から収穫しても十分美味しいです。
中央の大きな雄しべや雌しべは苦いらしいので、花びらを破らないように丁寧に開いて、取り除きます。
イタリアでは、花のなかにリコッタチーズを詰めて揚げたお料理をよく見ますが、単純に花だけを炒めても、付け根の部分がホクホクと栗っぽくて、美味なのです。

いつも魅力的なレシピを教えてくれる、同じ菜園のギリシャ人のおばあちゃんに聞いた、生米とタマネギを炒めてズッキーニの花に詰め、蒸し焼きにする調理法も絶品でした。
このとき、フライパンに直接ズッキーニの花がくっつかないように、トマトやチャード(フダンソウ)を細かく刻んで炒め、その上に載せるようにして蒸し焼きにするのがコツと聞いて、私もその教えを守っています。

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ほかにもある秘密の収穫物

ズッキーニの花のように、シーズン中、繰り返し収穫できるものではありませんが、特定のシーズンにひとつの株からひとつだけしか採れない、育てているからこそ食べられる贅沢品も、いくつかあります。

例えば、空豆の新芽。
空豆の豆の部分が成熟しつつある頃、アブラムシの被害に遭いがちなのが茎のてっぺんにある新芽の部分です。
アブラムシの被害を最小限に抑えるためにも、この部分を刈り取ってしまうのですが、これが炒め物にするとなんとも言えず美味しいのです。
シンプルに、油揚げと一緒にごま油で炒め、かえし(醤油とみりんとお酒を合わせて火を通した調味料)をさっと回しかけるだけで、満腹感のあるおかずになります。

(写真)空豆の新芽炒め

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もうひとつ、英国のスーパーでは買えない貴重品が、ニンニクの芽です。
ニンニクは大きく分けて、保存性の高い軟軸種と、あまり保存のきかない硬軸種がありますが、ニンニクの芽が出現するのは硬軸種のみ。
一度収穫すると再度生えてこないので、これもひとつの株からひとつだけです。
ニンニクの芽が欲しいばかりに、あまり保存のきかない硬軸種を毎年いくつか育てていますが、病気に見舞われたのか、今年はほんのわずかしか採れませんでした。
これでまた、来年のこの季節まで、ニンニクの芽はお預けです。

(写真)ニンニクの芽ほか、初夏の収穫

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