編む編む繕う

#ヨーロッパ #暮らし #安田和代

2025/10/22100 Views

writer:安田 和代(やすだ かずよ)
ロンドン在住の日本人編集者/ライター。昼は本を編み、夜は毛糸を編み、週末は畑で有機野菜を育てる日々。読書、写真、畑しごと、発酵食品&保存食づくり、編みもの、ポッドキャスト「試運転(仮)」、通信制大学で食物学の勉強など、あっちもこっちも。

忙しい夏の畑仕事が一段落して、木々が色づくころになると、あたたかいニットウェアが恋しくなります。
編んで、そして編んだものを手入れすることに目がいく季節なのです。

特別な糸をつかった特別なセーター

先日、ほぼ1年がかりで1枚のセーターを編み上げました。
本当はもっと早く仕上げられる予定だったのですが、春先に畑仕事をしているときに手首を痛めてしまい、しばらく編み針を持つことができなかったのです。

このセーターは、私にとっては、ちょっと特別な一枚です。
昨年、雑誌の企画で英国南西部のデヴォンの工芸作家さんを数人取材しました。
そのなかのおひとりが、自分で羊毛を染め、紡ぎ、そして手編みしたり手織りしたりして作品を制作しているシーラ・ブラウン(Shelagh Brown)さんです。
もともと編み物好きの私は、取材を通じて、シーラさんとすっかり意気投合してしまい、彼女の紡いだ美しい艶のあるデヴォンの毛糸に惚れ込んでしまいました。

そこで、ひとまずは「ベストを編めるくらいの分量」の毛糸を分けていただいたのですが、家に帰って、毛糸をながめているうちに、やっぱり袖のあるセーターを編みたいな、と思い始め、シーラさんにお願いして追加で糸を送っていただいたのです。
デヴォンを訪れた記念にしようと思い、首回りの別色も、デヴォンの古代種のヒツジを保護している牧場のショップ、ダートムーア・シェパード(The Dartmoor Shepherd)で購入した糸を使いました。

デザインは、ドイツ在住の日本人ニット作家Midori Hiroseさんの「チェリー」です。
Midori Hiroseさんのデザインは、使う糸によってまったく違う一枚になることが想定されていて、なおかつとても着やすく、どこか遊びがあって、作るのも着るのも楽しいのです。
このチェリーも、パーツを継ぎ合わせるのではなく、袖や身ごろを一気に編みきるパターン。
袖のかたちがユニークなのも気に入っています。

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繕うことも、また愉し

畑を始めてから、畑でとれるもので、糸を染めることにも興味を持ち始め、インディゴ(タデ藍)を畑で育てて生葉染めしたり、マリーゴールドの花やレモンバームの葉などで、糸を染めてみたり、あれやこれやと試しています。
いわゆる濃紺の藍染めは、インディゴの葉を発酵させてこそ出せるもので、生葉からは空色や淡い緑などの色を出すことができます。
マリーゴールドの花の鮮やかなオレンジ色は淡い黄色に、レモンバームの緑はベージュになりました。
予想に反した色になるのが、またおもしろいところです。

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英国で、そんな編み物や毛糸の大敵なのが、蛾です。
ニット、特にカシミアやメリノなど、天然100%素材に卵を産み付け、その幼虫がむしゃむしゃと食いあさるようです。
昨年の夏は特に、我が家で蛾が大暴れして、私の持っているほぼすべてのニットウェアに穴があきました。

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そんなわけで、私が新年に立てた今年の目標のひとつは、「ダーニングを学んで、ニットの穴を繕うこと」でした。
行きつけのウールショップで開催された、テキスタイル・アーティストのセリア・ピム(Celia Pym)さんが教えるダーニング・ワークショップに参加。基本の繕い方を学び、繕って繕って繕いまくりました。

セリアさんによると、蛾の被害を防ぐには、ニットを洗濯するだけでは不十分で、冷凍庫で48時間凍らせることが大切なのだそうです。
また、蛾の天敵であるパラセティック・クローズ・ワスプという蛾の卵に寄生する微小ハチを利用する方法もあるとか。
小さな不織布袋に入ったこの微小ハチの卵が販売されており、これを衣装ケースなどに入れておくと、やがて成虫となり、蛾の卵のなかに自らの卵を産み付け、ハチの幼虫が蛾の卵を食べ尽くすことで、蛾を撲滅させます。
ハチは人体にはまったくの無害で、その死骸もあまりに微小なのでパラパラとした粉状なのだそうです。
スコットランドの国立博物館などでは、すでに採用しているそうですが、我が家では家人からの大反対を受けて、まだ踏み出せずにいます。
しばらくは、冷凍庫を利用するしかなさそうです。

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